お墓の豆知識 – 仏事の豆知識

その1.『立飯(たちはん)』

故人とする最後の食事を立飯(たちはん)と言い、葬儀の前に振るまわれます。
地域によっては「たちば」「たち」などと言うようです。
「お斎(とき)」と呼ばれる方も多くいらっしゃいますが、立飯とおときは少し違います。
おときは仏教行事に際しての会食のことで、ともに仏事に遇えたご縁を喜び、会食を通じて、仏さまのご恩を確かめあうものです。
ちなみに、岡山方面では立飯は巻き寿司などが多いようですが、広島方面は白いご飯に煮しめやみそ汁などの精進料理です。
また出棺直前に振る舞われたり、「たちは」と呼び、会葬礼品を指す地域もあるようです。
葬儀は、今もその地域ごとの特色が濃く残っていると思います。

その2.『盂蘭盆会(うらぼんえ)』

八月十三~十五日はお盆休みの会社が多いようですね。帰郷する人、家で盆行事をする人、盆踊りに参加する人、あるいは家族で旅行へと考えている人もいるかもしれません。一般的にお盆といえば、ご先祖様の霊が我が家に帰って来られる日であり、祖霊を祀るのがお盆行事として知られています。
仏法に遇えたご縁を喜び仏様に手を合わせるのが、本来の盂蘭盆会の姿ですが、日本古来の風習としてご先祖様を大切にする精神は、とても大切なことです。そしてまた、なすびの牛やきゅうりの馬、盆灯籠に、麻幹を焚いた迎え火やお墓参りなど、季節の風物詩としても、子供の心に美しい日本の姿がくっきりと焼き付けられるのではないでしょうか。
また、お墓を囲んでご先祖様を偲ぶのは、日本の良き風習です。お盆には墓所も賑やかになります。
お盆には家族みんなでお墓参り。大切にしたい、日本の心です。

その3.『焼香(しょうこう)』

仏壇飾りで最も基本となる三具足(みつぐそく)は、ローソク立、花びん、香炉です。お浄土に満ちていると云われる「光」「お花」「香り」は、日々のお参りに欠かせないお供えというわけです。
焼香は元来、インドでは体の臭いを除くための風習でした。現代、仏事でお香を焚くのは、清浄な香りで身を清め、心身共に落ち着かせ礼拝供養するためです。また、場を清浄にする、清らかな香りをかぐことでお浄土を想像する、香りが隅々まで広がることからすべての人に平等に行き渡る仏様の慈悲を享受する、などの意味を持つともいわれています。
線香は抹香を長持ちさせるためにできたもので、焼香の心は同じものです。ただ線香の場合は、いわゆる「抹香臭い」と若い人は苦手な人が多いようです。たいへん清らかな良い香りが漂うお浄土を身近に感じるためにも、少々値は張っても良い線香を求めたいものですね。

その4.『除夜の鐘と修正会(しょうじょうえ)』

宗派によっては、除夜会・元旦会とも言われるお寺の年中行事です。
除夜の鐘は大晦日に、寺院で行われる法会の一部として、一〇八回撞かれる鐘のことで、よく知られている行事でしょう。過ぎ去ってゆく一年を振り返って反省し、来るべき年を迎えます。修正会は、旧暦一月に行われる法会で、前年を反省して、悪を正し、新年の国家安泰・五穀豊饒などを祈願するもので、大寺では大きな行事となっています。
初詣は神社にお詣りする人も多いと思いますが、除夜の鐘を耳にすれば、「ああ、今年もいよいよ終わりだなあ」と感慨深くなる人もまた多いはず。神社派の人も、たまには除夜の鐘撞きで年越ししたり、新年の修正会に参加するのも良いのではないでしょうか。なにより、お寺と墓地が近くなら、お墓参りを兼ねて家族みんなで寺院に初詣を。ご先祖様を崇拝することで、家族みなが一年、仲良く暮らせるのではないでしょうか。

その5.『お供え花』

仏壇飾りの基本となる「光」「お花」「香り」。お浄土に満ちているこれらは、日々のお参りに欠かせないお供えです。通常、仏花といえば、菊の花を連想しますが、一般家庭でのお供え花は、厳密な決まりはありません。お花は、仏様の慈悲の心を表すものなので、花の正面を仏様側ではなく、お参りする側に向けます。また浄土の様子を表していることから、浄土にはない毒花や臭い花、トゲのあるものは、ふさわしくありません。でも、それ以外の生花なら、どんな花でも大丈夫。仏様を大切に想う気持ちがあれば、自分の好きなお花をお供えすればよいのです。
仏間は、家族の核になる場所です。季節の花や、家族の好きな花、想いのつまった花を仏壇にお供えすることで、ちょっとした話題のきっかけになったり、家族の絆がより深まることがあるかもしれませんね。

その6.『お布施』

お仏壇のあるご家庭では、お盆はお盆飾りやお供えはもちろん、お寺さんにお参りしてもらったり、と何かと慌ただしいものですね。
さて、お寺さんにお参りしてもらったら、お渡しするのがお布施。お寺さんへのお礼として渡してしまいそうになりますが、本来、お布施とは労働報酬ではありません。
「布施(ふせ)」とは、「あまねく施す」という意味で、仏教の修業のひとつ。自分以外の人や物に、自分の持っている思いやりを分け与えることなのです。
「布施」を、大きく分けると、「法施」(教え)・「財施」(金や物)・「無畏施」(思いやり)の三つになります。
一年の大切な節目に、お布施することで、また一年健やかに過ごしたいものですね。

その7.『初詣(はつもうで)』

初詣と言えば、神社へのお参りを連想される方が多いでしょうが、初詣は寺社へお参りするもので、神社・寺の区別はありません。(昔は神仏習合の慣わしで、区別する必要もなかったのでしょう)
さて、今年の初詣は神社へ行かれた方が圧倒的に多かったのではと思いますが、子どもさんと一緒ならお寺さんをお勧めしたいと思います。お仏壇に向かって手を合わせる、お寺の本堂へお参りし、お寺さんにご挨拶する、先祖を祀るお墓へ詣でる。お子様連れで家族で詣でることは、家族の絆を強め、将来的に次の世代へゆるやかに交代していく意味合いもあります。
特にお墓は、何代にもわたるご先祖様のおかげに感謝し、今を生きる私たちに何が託されているのか確認する場所でもあります。年初め、ご先祖様に感謝しながら家族で気持ちを新たにすることは、どれほど幸多いことでしょう。